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皮膚症状の発症機構

現在、色素性乾皮症が起こる原因は、XP患者には、DNAの修復酵素 が無い、製造出来ないことであると考えられています。この酵素を作り出すDNAが先天的に壊れているのです。正常細胞に、紫外線が照射されると、細胞内のDNAが突然変異により、傷が出来てしまいますが、正常な人は、この傷を修復し元のDNAに再生する、いわゆるDNA修復酵素が働きます。しかし、XP患者には、このDNA修復酵素が無いため、皮膚細胞が無防備に荒らされ続け、ついには皮膚癌になってしまうのです。

皮膚症状について

阪南中央病院 (皮膚科) 佐藤健二

色素性乾皮症 (XP)

 という病名は皮膚症状から付けられた病名です。そばかす様の色素沈着があることと、日焼けの結果として乾いた鱗屑( りんせつ: フケのような物 )が付着していることから命名されました。多くのXP患児は初めて外出するときに長時問の日光曝露で強い日焼け(日光などの紫外線の当たった場所のみに出る赤み)を起こし、しばしば水疱 (すいほう:水ぶくれ) まで形成します。日焼けを繰り返していると、半年ぐらいで頬などに直径5mmまでのそばかす様の色素沈着を起こします。その後、脂漏性角化症(しろうせいかっかしょう)やケラトアカントーマ、基底細胞癌、扁平上皮癌、悪牲黒色腫などを発生します

脂漏性角化症 (しろうせいかっかしょう)

良性の腫瘍です。隆起があり触ればゴマ粒のように感じますが角層が少し分厚いため、表面がざらざらでくすんだ感じです。色は普通の皮膚色から黒褐色まで色々です。表面に湿り気はありません(二次感染の合併を除いては)。

ケラトアカントーマ

良性と悪性の中間ぐらいの腫瘍と考えられています。一ヶ月で0.5から1cmにもなる事があるほど急激に大きくなります。中央は角質が詰まっている感じです。急激に増殖するので非常に悪い物と思われがちですが、3-6ヶ月位で白壊して消えます。扁平上皮癌と似ているので、多くの医師は切除すべきかどうか迷います。必ず皮膚科医の診察を受ける必要があります。

扁平上皮癌 (へんぺいじょうひがん)

表皮から生じてくる悪性の腫瘍で、褐色調はありません。形は、初めは半球状で、拡大するにつれて扁平化し、ついには中央が潰瘍化します。大きくなると赤みが出ています。大きくなるスピードはかなりゆっくりです。切除する時、周囲の正常皮膚は少し余分に取る必要があります

褥創 (じょくそう)

車椅子生活になったり寝たきりになると、同じ体位を続けていることが長く、同じ場所に長時間圧力がかかり、血行が悪化し、皮膚が死にかけます。こうなると赤くなり、さらに悪化すると潰瘍となりますが、これが褥創です。予防には頻回の体位変換が必要で、末梢血流の改善を旨く行うことが必要です。

日焼けについて

健常児の場合、日光照射の8-24時間後に皮膚の赤みが最も強くなりますが、XP児の場合、48-72時間後に最強となります。だから、軽い日焼けの場合は、健常児に比べて1-2日遅れて日焼けの赤みが出てくるため、太陽光との関連に気付かない可能性があります。また、学校などで戸外活動をした後の日焼けの有る無しを評価する時、日焼けが遅れて出ることに注意が必要です。

そばかす様色素沈着

本当のそばかすとXPに出るそばかす様色素沈着は似ています。XPの色素沈着は進行した段階ではそばかすに比べて黒色調の差が大きいが(真っ黒から灰色近くまで幅があり)、そばかすの場合はあまり色の差はありません。

ほくろ

ほくろは良性の腫瘍で、大きくなる速度が遅く、周囲を圧迫することが少なく、毛穴があるとそこは少し凹みます。あまり日焼けしていないときからの黒いものは殆どがほくろなので、その場所を記録しておくのがいいです。

基底細胞癌 (きていさいぽうがん)

これはXP患児に最も多くできる悪性の腫瘍ですが、転移はしないので非常に大きくならない限りあまり心配する必要はありません。悪性の腫瘍は小さくても周囲の正常組織を押しのけるようにして大きくなりますので、皮膚の表面は延びきって緊張し、つるつるした光沢を持ち、触れば小さなゴマ粒を触っている感じがあります。周囲に発赤を伴うことが多いです。ほくろとの区別は難しいです。切除するとき、周囲の正常皮膚を大きく取る必要はありません。小さければ液体窒素療法で取れます。

悪性黒色腫 (あくせいこくしょくしゅ)

メラノーマのことで、一番悪性度が強い腫瘍です。初めは盛り上がりのない扁平な黒い色をしています。周囲に褐色から黒色の染み出しや赤みがあり、形はいびつです。盛り上がりが出てくると危険です。切除する時、周りの正常皮膚をかなり含めて切除しなければなりません。しかし、早期に切除すれば予後はいいです。

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